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「台座と玉はそれぞれの魂を静め、二つ交わる時、魂を浄化する……この言葉を知っているか? 台座とは、お前が忍ばせている物だろう。そして玉はこれだ」
髪をかき上げると、青く光る宝石が耳元に見える。ピアスに加工して身に付けている様だ。
「この宝石は魂を眠らせる効果がある。そして、その台座はガラシャの魂を眠らせるのではないか?」
「なっ、何でそれを……」
「図星か。なあに、簡単な事だ。先程の言葉を思い出してみろ。台座と玉はそれぞれの魂を静め……」
話を遮り、珠姫が叫ぶ。
「そうか、分かったぞ! お主、その宝石で現世の可児才蔵を眠らせておるのだな」
「察しがいいな。それぞれの魂を静める……その意味とは、宝石は現世の魂を眠らせ、台座は前世の魂を眠らせる。お前たちのお蔭で確信が持てたよ。さて、その台座を渡して貰うか。もう少し調べたい事があるのでな……」
才蔵が驚く速さで襲い掛かった。不意を突かれた輝は防御の構えを取る事も出来ずに、重い一撃を喰らってしまう。
「ガハッ!」
「終わりだ……」
「やらせぬぞ!」
才蔵に飛び掛かる珠姫。捉えたと思った瞬間、才蔵は笑いながら振り返り、寸前で珠姫の攻撃をかわして背後から締め上げる。
「甘い、甘すぎる。俺の生きた時代では、どんな時でも警戒を解かず、常に臨戦態勢でいるのが当たり前だった。女のガラシャや、現世の小僧には分かるまい」
「クッ……珠姫を……放せ……」
「台座をこちらへ投げろ。そうすれば解放してやる。さあ、早くするんだ! ガラシャの首を折ってしまうぞ!」
ただの脅しには聞こえなかった。
目の前の男に、輝はかつて感じた事の無い恐怖を覚える。
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