【第四章】 二つの魂を持つ男

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「分かった、渡すから珠姫を放してくれ!」  ポケットからネックレスを取り出し、才蔵へと投げつけた。 「ご苦労。ほら、返してやるよ」  珠姫が解放されると、輝はすぐに駆け寄り抱きかかえる。 「大丈夫か!?」 「わらわは……大丈夫じゃ……それより……あやつを……」 「分かった、待ってろ……」  輝の目付きが変わり、才蔵を睨み付ける。 「一つ聞くぞ? そのネックレスと宝石をどうするつもりだ?」 「二つが交われば魂が浄化される。私の中に眠る前世の魂が邪魔でな……」 「可児先輩の魂を消す気か!?」 「それだけではないぞ。上手く行けば魂だけの転生を繰り返し、来世の魂を消し続ければ、俺は永遠に生き延びる事が出来るのだ」  才蔵の考えに珠姫は戦慄が走った。  もし自由に魂を子孫へと移動させる事が出来たなら? 台座と宝石さえあれば子孫の魂を浄化して、常に自分の魂を子孫の体に留められる。それを繰り返し行えば、子孫が潰えない限り永遠の時を生きる事も可能。 「但し、調べねばならない事がある」  珠姫は才蔵の言う意味を理解し、震える声を必死に絞り出す。 「魂の浄化と言うが、どの魂が浄化されるのか……それを知りたいのじゃな。現世の魂か、前世の魂か、それとも全ての魂なのかを」 「その通りだ。だからガラシャよ、お前にはもうひと働きして貰わねばならぬ。せっかく放してやったのだ。池田輝と最後の別れをするがよい」  このままでは実験台にされる。自分が消えるのは問題無い。だが、もし珠子の魂が消えてしまったら? そう考えると、珠姫の震えは更に激しさを増す。  そんな珠姫の体を覆う様に、輝が力強く抱きしめた。 「もう油断はしない。大丈夫だ、俺がついている……」  珠姫の震えがピタリと止まる。  そして輝の闘志が燃え上がり、才蔵の気迫を押し返した。
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