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「強い義侠心を持っているな……俺の一番嫌いなものだ。もうよい、さっさと終わらせよう」
才蔵が飛び掛かり、輝が迎え撃つ。その攻撃は凄まじい速さだったが、輝はギリギリでかわした。
「何だと?」
「へへっ、思った通りだ。あんたは俺なんかが逆立ちしたって敵わないくらい凄い武将だったんだろ? でも、今は可児先輩の体なんだぜ? 頭が命令しても、体が反応しないんだよ」
次第に輝の攻撃がかすり始める。才蔵は距離を取って輝を睨み付けた。
「……確かに凄い身体能力だ。だが、これを俺の本気だと思うなよ。今迄は勘を取り戻す為のお遊びだ」
もう一度才蔵が襲い掛かる。同じ様に攻撃をかわす輝だが、少しずつ反撃が出来なくなってきた。
「どうした? 見切ったのでは無かったのか?」
輝は防戦一方となり、とうとう顎に重い一撃を喰らってしまった。視界が薄れ、足の踏ん張りがきかずに倒れ込む。
「輝―――!」
珠姫の声が届いても、輝の体は動かない。
「終わったな。さて、どちらの魂が浄化されるのか見てみよう。現世の魂が消えるか、ガラシャの魂が消えるか……」
才蔵は腰を抜かして動けない珠姫にゆっくりと近づく。
「やめっ……やめるのじゃ……珠子が消えたら……」
「さあ、見せてくれ」
ピアスについていた宝石を外し、台座となるネックレスへ嵌め込んだ。そして、珠姫の首に掛けようとする。
「嫌じゃ……嫌じゃ……」
「に……げ……ろ……た……ま……」
絶対絶命と思われた瞬間、才蔵に向かって飛び蹴りが放たれた。
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