仲間

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 才蔵は飛び退いて距離を取る。 「珠姫ちゃん、大丈夫!?」 「ううっ……えっぐ……ま……マツ……」  茉莉はボロボロと大粒の涙を流す珠姫を抱き締め、優しく頭を撫でた。 「珠姫ちゃんを泣かせる奴は私が許さないよ!」 「お前は……明石から逃れたのか?」  驚く才蔵の横から、気配を消していた勝也が怒涛の連撃を繰り出す。 「僕も忘れないでよね」  不意を突かれた才蔵は、さらに後退して呼吸を整えた。 「ふう……次から次へと……二人、いや三人か」  周囲を見渡すと、倒れている輝の横で利彦が膝を突いている。 「大丈夫か?」 「ああ……だけど、まだ動けないんだ。トシ、三分……いや、一分でいい。あいつを止めてくれ」 「了解だ」  利彦、勝也、茉莉が三方向から才蔵を囲む。その状況でも、才蔵は不敵な笑みを浮かべた。 「何を笑っている?」 「お前が明石を倒したのだな。池田輝が褒めていたよ。キレた前田利彦は誰にも止められないとな。だが、傷を負い過ぎだ。そんな体では真面に戦えない事を、自分が一番分かっているだろう。池田輝が復活するまでの時間稼ぎ……私の猛攻に耐えられるか?」 「努力をしよう」  利彦の合図で三人が同時に襲い掛かる。  才蔵は勝也に向かって走り、鋭い蹴りで吹き飛ばした。そして茉莉の攻撃を掻い潜り、腕を掴んで利彦へと投げつける。 「キャア!」  茉莉を受け止めて両手を塞がれた利彦の前には、既に才蔵の拳が迫っていた。利彦は茉莉を庇い、才蔵の拳を正面から体で受け止める。 「グッ……」 「なんと、俺の拳を受けても倒れぬとは。相当体を鍛えておるな」 「……マツ、勝也、下がっていろ。こいつはレベルが違い過ぎる」 「確かに明石を倒しただけはある。たった一度の攻防で俺の力を見極めたか。では、何処まで耐えられるか試してやろう」  今の自分では才蔵に攻撃を当てられない……そう考えた利彦は攻撃を耐え続けた。 「何故だ? 何故そこまで耐えられる?」 「……心友の頼みだからさ。そして、時間だ」  才蔵の目に、立ち上がった輝の姿が映し出される。
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