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「珠姫ちゃんは珠子ちゃんと話せるの?」
「勿論話せるし、この会話だって珠子も聞いておるぞ。ところで、ここは四百年後の尾張国なんじゃろ? 珠子は頭が良いのう。短時間で分かり易く現世を教えてくれる頭脳、天晴じゃ! これ、照れなくても良いではないか」
状況を整理しよう。輝と亜紀は互いに目を合わせて頷いた。
珠子は明智光秀の三女である珠姫の末裔。体の中に珠姫の魂が眠っていて、階段を転げ落ちたショックで目覚めてしまった。今は二重人格の様になっていて、どちらかの魂が表に出て来る。
……駄目だ。全く理解出来ない。
「あの……珠姫ちゃんにお願いなんだけど、珠子ちゃんと話せるかしら?」
「珠子と? 仕方が無い。亜紀殿が言うなら変わってやろ……う……うっ、うっ……亜紀さーん!」
涙を溜め、珠子は勢いよく亜紀に飛びついた。
「泣かないでね。詳しく教えてくれる?」
「えぐっ……えぐっ……階段を踏み外した時に、頭の中で声がしたんです。それが珠姫ちゃんで、それからずっと話し掛けられていました。おかしくなったと思われたくなくて、黙っていたんです……」
「分かったわ。とにかく病院へ行きましょう。輝はタクシーを呼んでちょうだい」
亜紀は携帯を手に取り、珠子の母親へと簡潔に状況を伝える。こうして三人は近くの総合病院へと向かった。
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