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倒れた才蔵が動かなくなると、輝は駆け寄って確認した。
「……大丈夫だ、息はある。気絶しているだけだな」
全員が安堵のため息を漏らす。それと同時に、目を腫らした珠姫が近づいて来た。
「よくやったぞ、輝。どうやら浄化されるのは仮の魂の様じゃのう」
「ああ、そうみたいだな……って、おい! 何をするんだ!?」
珠姫は才蔵の着けているネックレスを外し、全員の顔を確認して優しく微笑む。その姿は月の光を全身に浴び、幻想的に輝いて見えた。
「本当にすまなかった。わらわがいなければ、誰も傷つく事など無かったのに……お主らにはいくら感謝してもしきれぬ」
「珠姫ちゃん? 何を言ってるの?」
「ありがとう、マツ。短い間だったが、お主がいてくれたから本当に楽しかった。わらわを泣かす奴は許さない……その言葉、嬉しかったぞ」
「どうしたの? なんでそんな事を言うのよ!」
「勝也、ありがとう。お主は弟の様に感じておった。これからも鍛錬を忘れず、いつか兄弟子のトシを超えるがよい」
「そんな……珠姫さん……」
「トシ、ありがとう。お主がいなければ……皆、どうなっていたか分からぬ」
「……当たり前の行動をしただけだ。それに、珠姫は僕の心友だからな」
「ふふっ、嬉しいぞ。そして、輝」
「……何でだよ」
「?」
「成仏するのに反対はしない。でも、何でそんなに急ぐ必要があるんだ!? 文化祭の準備も一緒にしたじゃないか! 文化祭の本番まで待ってもいいだろ? そっ、それに、まだ駅前にある店のクレープも食べてないよな? 食べたいって言ってたよな? 野球観戦もしてみたいって言ってたし、高級なフランス料理も食べたいって言ってたろ? あっ、ほら。あれも……」
珠姫は笑顔を崩さず、輝の言葉を一言一句漏らさずに聞き続ける。
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