約束

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「珠……子?」 「……輝君」  珠姫は消えてしまった……その状況を受け止めきれず、肩を落とす輝の下へ茉莉たちが駆け寄って来る。 「輝、しっかりしてよ! あなたが落ち込んでたら珠姫ちゃんも浮かばれないよ」 「あの……輝君……マツちゃん……」 「そうだよ、輝さん。笑って送り出してあげようよ」 「その……勝也君……えっと……」 「珠姫は僕たちの心に生き続けるじゃないか!」 「……トシ君……話を……」  珠子が必死に何かを訴えようとするが、茉莉たちの声で掻き消されてしまう。 「えっと……その……あの……みんな、聞いてよ―――!」  突然叫んだ珠子に驚き、全員が目を丸くして声を失った。 「あっ、ごめんなさい。あのね、珠姫ちゃん……まだ、私の中で……眠ってるみたいなの……」  ……  …… 『えっ?』  四人の声がシンクロし、意味が分からず立ち尽くす。  やがて違和感に気付いた勝也が声を上げた。 「あっ、輝さん! 珠子さんが付けてるネックレスの宝石……さっきまで綺麗な青色だったのに、なんか色褪せて灰色っぽくなってるよ」  宝石を外して確認すると、禍々しい気配が消えている。 「才蔵の魂を静めたから効力を失ったのか? つまり珠姫は、ネックレスの効力で眠っているだけ……」  ……  ……  消えてなかった。  嬉しさが込み上げてくると同時に、恥かしさも膨れ上がって行く。顔を真っ赤にした輝と珠子は俯き、茉莉たちはニヤニヤと笑い掛けた。 「好きだよ……って言ってたよね?」 「気が付いたら、かげがえのない存在になってた……とも言ってたよ」 「わらわもじゃ……って返事をしていたな」  恥ずかしさが加速して、輝の中で何かが切れる。 「だぁ―――!!! うるせえ、うるせえ、うるせえ! お前ら、そこへ並べ!!!」  一斉に茉莉たちは逃げ出し、輝との鬼ごっこが始まった。 「そんなボロボロで追いつけるかしら?」 「僕のスピードを舐めないで欲しいな」 「待て、心友! 先ずは病院だろ!?」  ……  ……  一人残された珠子はニッコリと微笑む。 「珠姫ちゃん……今はゆっくり休んでね」  珠姫は珠子の中でスヤスヤと寝息を立てていた。
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