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可児才蔵の魂が浄化された次の日、輝と珠姫は現世の才蔵に話を聞く。しかし、数ヵ月間の記憶が全くないと言われ、詳しい情報は聞き出せなかった。
ネックレスの効力で寝ている時は、珠姫も記憶が残らない。恐らく、宝石を手に入れた才蔵がピアスとして身に付け、ずっと外さずに現世の才蔵を封印していたのだろう。
「結局、何も分からなかったな」
「仕方が無いのう。現世の魂は眠らされておったのじゃからな」
「ふりだしに戻ったな。やっぱり真実を伝える小説を書くしかないのか?」
「そんな事はないぞ。そのネックレスを見せてみよ」
珠姫は台座となるネックレスを受け取り、じっと見つめる。
「やはり、禍々しい気配は何一つ衰えておらん。宝石は役目を終えたから効力を失った。しかし、ネックレスは……」
「まだ役目を終えてないから効力を保っている?」
「そうじゃ。つまり、才蔵が持っていた宝石以外にも同じ物がある……まあ、その可能性があるってだけじゃがな。当分は小説のふぁんを増やしつつ宝石探しじゃの」
「それってふり出しじゃないか。まあいいけど……取り敢えず、来週も文化祭の準備を手伝ってくれって勝也が言ってたぞ」
「よいぞ、よいぞ。手先が器用なわらわが力を貸してやろう。輝は小説を書くがよい。あんな体験、小説に活かさねば勿体無いからのう。それから、本質を忘れてはならぬぞ。歴史の真実を伝える書物も作り、父上の汚名をそそぐのじゃ」
確かに夢だと思ってしまう程の体験をした。
輝は記憶を頼りに、青春ファンタジー小説の《たまひめ》を書き始める。
そして、臨場感溢れる作品が文化祭の前日に完成した。
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