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病院に着くとすぐに精密検査が始まり、その間に珠子の母親である美優が駆けつけた。
「亜紀ちゃん! 珠子は無事なの!?」
亜紀が事情を説明していると、検査を担当してくれた先生が現れて別室へと案内される。
「先ずは怪我の症状ですが、軽い擦り傷程度ですね。脳波も正常で問題は見られません。そして、予め聞いていた情報の解離性同一性障害……一般的に言われる多重人格については確認が取れませんでした。ただ酷く混乱している様子なので、暫く様子を見ましょう。解離性同一性障害に詳しい専門医がいます。紹介状を書きますので、不安な事があればそちらの病院で受診して下さい」
医師の淡々と述べる内容に美優は胸を撫で下ろすが、実際に珠姫を見た亜紀と輝は納得がいかない。
取り敢えず美優の車で帰宅する事になり、その途中で輝は口を開いた。
「珠子……珠姫はどうした?」
「出て来てくれないの。あやつらは怪しいから嫌じゃ……って……嫌っ……そ……そう! あやつらは怪しいから信用ならん! わらわを病気扱いする奴など信用できるか!!!」
出た、珠姫だ。
突然娘が叫んだ為、美優は驚いて急ブレーキを掛ける。
「たっ、珠子!? どっ、どっ、どうしたの!?」
「美優ちゃん、落ち着いて! 取り敢えず家に戻ってゆっくり話しましょ?」
このままでは事故を起こす。そう考えた亜紀は美優をなだめながら家へと向かわせた。
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