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――翌日……
普段通りに会社へ通勤したが、なぜかいつもなら電車で会う伊川と会わなかった。
「デスクにもおらん、か……」
自分のデスクに向かう前に伊川がいる部署を窓越しに覗き込むように確認してみるがやはり伊川の姿はなく、おもわずどこ行ってん……なんて柄にもなく呟いていれば、自分の上司に呼ばれて、しまいには資料を会議室まで運ぶよう言われた。
「……なんで俺にこんな……」
今こんな事してる場合やないんやけどな。など愚痴をこぼしながら山積みされた資料を抱えて、会議室に向かっていた。
そして会議室に向かう途中にある自動販売機があるフロアに近付いてきた時
遠くからでも分かる聞き覚えのある声が誰かと必死になりながら話している声が聞こえた。
この声、まさか……と資料を抱えたまま少し駆け足でしかし相手に気づかれないようにすぐそばの壁に姿を隠すように寄り掛かり、話に耳を傾けた。
「……だから、なんでやって聞いてんねん」
そこには近くまで来て伊川がいる事が分かったが、その声だけ聞いても明らかに穏やかではない事が分かり、状況が気になってしまってしまい、少しだけ顔を壁から出して様子を見た。
すると伊川は誰かと電話しているのが見て分かった。
「ほんまにええんか?」
電話の相手に向かって深刻そうな表情で問い掛けていた。
伊川のやつ、いったい誰と電話してんねん……伊川の様子を見ながら小さく呟いていると遠くから伊野部が呼ばれる
呼ばれて急いで壁に隠れて返事をする代わりに頭を下げた後
伊川にばれない内にその場を離れるように会議室に向かう道に戻った。
「絶対気付かれたよな……」
あーやってもうた。ため息を漏らして呟いていると会議室の前を通り過ぎようとしてしまい、慌てて引き返し会議室の扉を片手で開けて中に入った。
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