第二章/第一幕「夢を捨てし者と夢を追いかけし者」

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――あれから数時間後 「……はぁ……」 やっとの思いで会議室から自分のデスクに戻る事が出来て、椅子に腰掛けると同時に深いため息を漏らして腕を上に上げて思いっきり伸びた。 「あーあかん……」 もうすぐ昼前やん。壁に掛けられている時計を見て時間を確認したするとまたため息が漏れて、机に顔を伏せた。すると 「何さっきため息ばっかついてるんですか?」 先輩らしくない、と伊川がデスクを覗き込みながら背中越しに話しかけられ、ゆっくり顔を上げてみれば 「あー伊川やんか」 「疲れ切ってますねぇ」 「まぁ少しなぁ」 資料まとめてたらそのまま参加させられた会議が長引いてもうてなぁと気だるそうにまた伸びをしながら答えると 「そうなんですか…………それでもし違ったら謝りますけど……あのー、さっき兄さん俺が電話してる時にいました?」 「えっ?あー会議室に資料を届けに行く途中にお前らしき姿は、遠くから見たけど……まぁ会議室に行かなあかんかったからちらっと姿見ただけですぐ会議室行ったで」 「じゃあ電話してるところとか、見てないって事ですか?」 「あーあれ電話してたんや、遠くからやったらから分からんやったわ、でもなんでそんな事聞くん?」 本当は見ていたことは、あえて言わずに知らないふりして聞き返してみれば、少し焦ったように見えてないんやったら良いんですと答えると十二時を告げるチャイムが鳴った。
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