第二章/第二幕「夢さえも隠して」

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「まぁ、一応思い出の一つでもあるしな」 あいつとの……そう答えていると笑みを深めて嬉しそうですねの言葉を合図にもう一枚ある扉を開けると扉に付けられている鐘がカランと店の中を鳴り響いた。 するともう定位置になりつつある真ん中のカウンター席のテーブルの上には出来たばかりの料理が置かれていた。 「あーさっき言い忘れていたんですけど、店長とかの呼び方は良いですよ。その呼び方は、後藤君だけで十分です。伊野部さんは伊野部さんが呼びたいように呼んで構いませんから」 「じゃあ……お言葉に甘えて」 伊野部が好きなように呼ばせて貰うわと微笑んだまま言った後にカウンター席にゆっくり腰掛けた。 そして食べ始めた。 しばらく食べ続けていると不意に話しかけられた。 「それでどうされたんですか?」 カウンター席の向かい側に回って移動した後 さっきとは少し声色が変わって真剣な雰囲気に変わると静かに問い掛けた。 「……あいつ今日誰かに電話しとったわ。明らかに穏やかな雰囲気やなかったけど……」 そんな村井の問い掛けにフォークを手に持ちながら、同じくさっきとは違う声色で真剣な表情を浮かべて答えた。 「電話、ですか……」 小さく言葉を繰り返しおもむろに右目に手を置くと 「やっぱりなんか夢が関係しているみたいですね。二人に共通している夢が……」 「二人……?」 「今回はもう一人関係しているんですけど、意外と難解かもしれません」 「えっ?」 「そうだ、仕事終わりで宜しいんですが……――――」 村井は、手を離すと琥珀色に染まった右目でまっすぐ見つめてある事を頼んだ。 その琥珀色の目から目が離せず、小さく頷いて分かった。と告げた。
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