第八章 『私の好きな人』

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 そして翌日金曜日、中間テスト二日目。  いつも朝教室に入る時に、“おはよう”と言っていた新君は何も言わずに、自分の席についた。  私は自分から新君に話しかけたことがなく、新君も来ないから言葉を交わすことはない。  この教室に新君がいると思うと、気まずくて、心苦しくて、どよーんと重苦しい。  そのまま放課後になると、新君は千葉君と教室を出て行って、取り残された私は静かに新君の背中を見つめた。  連絡もこずに土日を過ごし、本当にもう終わってしまった感が、強くなってゆく。  新君は何も言わなかったけれど、きっと私の別れてほしい、に同意したのだろう。  こんな風に、あっけなく別れてしまうとは思わなかった。これからも一緒にいると思っていた人と縁が切れてしまうのは、やはり隆君の時同様、あっけない。
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