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~千葉蓮人~
弓道場から二人の様子を見送った後、俺ははぁーっと大きな溜め息をついた。
「千葉、さっきひじり来てたよな?」
「うん、ひじりちゃん、新のことが好きだって言ってたから、連れてきた」
「……そっか、それじゃあ、仕方ないよな」
一瞬沈黙を挟んだが、村川は既にひじりちゃんの気持ちが分かっていたのか、悪いことは言わない。
「ひじり、前に進みだしたんだな」
「俺とだったらよかったんだけどねー」
今まで落とせない女の子はいなかったのになぁ。
でも、今は好きでも、元々は新に対する対抗心から始まった気持ちだったから、こういう結末になっても何も言えない。
やがてひじりちゃんの赤い傘に二人入って帰って来た新に、俺はわざとげに肩を組んでみる。
「イチャついてきた? 新のこと好きだって? 良かったな」
「最近避けられてたから、ホッとした。ありがとな」
「うぜー、俺にお礼言うとか、気持ち悪」
別に、俺はまたすぐ彼女できるからいいもん。羨ましくない。ない、けど……。
強がりながらも、俺は笑って項垂れた。
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