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~時東ひじり《ときとう ひじり》~
「ひじりとは、ちょっと無理っぽい」
「え……?」
「別れたいって、遠回しに言ってるんだけど」
──え……。
それは前触れもなく本当に突然で、オシャレな喫茶店で、私は向かい側に座った村川隆に返す言葉を失った。
今日は付き合ってちょうど一年記念で、高校二年になる前の、春休み当日。お祝いをしようと、一緒に大きなパンケーキを突いていたのに、いきなり何なの。さっきまで、ニコニコ話をしていたじゃない。
「私、何か……隆君の気に障るようなことしたかな」
「そうじゃなくて、俺、新しい好きな人ができてさ」
──もう、付き合っている。と言われた瞬間、私は目を見開き、思わず持っていたフォークをカシャン、と机上に落としてしまった。
「もう付き合ってるって……」
「うん、ごめん。だから、ひじりとは別れたい」
「私の知ってる人……?」
「青柳愛実」
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