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6
搬出車で山を登り、先程積んだ場所まで戻ってくると、親父が重機に乗って、材料の整理をしていた。
俺が搬出車から降りると、重機の中から手招きしてきた。素直に重機に近付く。
「今から、俺が一台積んでやるからよく見とけ。」
俺は無言で頷き、安全な場所に行き、親父の仕事を見ることにした。
機械の操作のスピード自体はたぶん俺と変わらない。何が違うのか。
そうか。1回で2つの動作をしているのか。
掴んで、搬出車の上に持って行くまでに向きを揃えたり、綺麗に積むために、前後と左右を同時に移動させている。爪から材料を離すときも、爪を開くと同時に、爪を上に移動させているので、すんなりと材料が降りている。スムーズだ。
そして、これを何も考えずに自然にやっているのだろう。これまで、何度も親父の仕事は見てきたが、やはり、ここまでなるには時間と経験が必要なんだと思う。
そんなことを考えていると、親父が重機から降りてきて、俺のことを見透かしたように、
「大丈夫だ。まだまだ俺のように仕事しろとは言わない。そのうち上手くなっていくから、心配するな。」
と言って、自分の現場の方に帰って行った。
俺はまた、材料が積まれた搬出車に乗り、山を下りはじめた。
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