プロローグ

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7  搬出車で下りながら、今までのことを思い出してみた。  俺は、高校を卒業して、定職に就かず、バイト暮らしをしていた。そんな俺に両親とも何も言わなかった。  高校を卒業したら、自分で道を決めろ。  昔から親父が言っていた言葉だった。その言葉通り、定職に就かない俺に対し、両親は何も言ってこなかった。母親は何か言いたそうだったが、たぶん親父がそれを止めていたのだろう。  正直俺は迷っていた。これと言ってやりたいことがあったわけでもなく、食べていければいいかなくらいの感覚だった。  実家で暮らしていたので生活費はかからなかった。食費くらいは家に入れていたが、それでも甘えた生活だろう。自分でも認識していた。  焦りが無かったといえば嘘になる。しかし、その焦りを払拭する何かを見つけることが出来なかった。このままでは駄目だというのは十分分かっていた。  それでも、外から見れば、ただの親のすねをかじっている駄目な息子。そういう印象なのだろう。そしてそれは、正しい意見だ。抗う気は無い。    小、中、高と成績は普通。これと言ってスポーツが出来るわけでも無い。かといって出来ないわけでも無い。頑張れば行ける大学もあっただろうが、それも違う気がした。
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