プロローグ

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 次は倒す方向だ。重機が集めに来る方向を予想して、集めやすいように倒さなければならない。  ここでやっと、チェーンソーのエンジンをかける。倒す方向に向けて、「受け口」という切れ込みを入れる。基本的に、木が真っ直ぐに立っているときは、倒す方向に対し垂直に受け口を作る。  もう一度笛を吹く。注意喚起。これから「追い口」といって、木の裏から切れ込みを入れるので、倒れる危険性が高まるからだ。  俺は追い口を作る前に、もう一度自分が逃げる場所を確認した。    深呼吸をし、倒す方向を見つめた。水平にと気を使いながら、チェーンソーの刃を入れていく。  ある程度入ったら、今度は楔(くさび)というものを今切った切り口に入れる。そして、後ろから「よき(まさかりを小さくしたような物)」で、叩く。  ここでもう1回笛を吹く。最後の注意喚起。  楔を叩く度に木の中から「ミシッ」という音が聞こえる。ここで、チェーンソーの切り込みが足りないと、木は倒れない。逆に、入れすぎると、変な方向に倒れてしまう。誰に教えられるものでもない。感覚の問題。  ゆっくりと木が倒れていく。俺は斜め後ろ方向に逃げた。  完全に安定感を失った木は、加速度を増して倒れていく。 「バッサーン」   轟音と共に煙が上がり、木が倒れた。    倒れた木に近づき、不安定な状態になってないか確認する。  よし。大丈夫。  次はどれを倒そうかと選んでいると、離れたところから俺を呼ぶ、親父の声が聞こえた。
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