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「おーい。」
「はーい。」
チェーンソーのエンジンを切り、親父が登ってくるのを待つ。さすがに何十年もやっているだけあって、親父は息を切らす気配すらない。
「どうだ。分かるか。」
「まあ、何となく。」
「次はどれを倒すんだ?」
俺は少し考えて、次倒そうと思っている木を指さした。
「まあまあだな。」
親父はこういう時、答えを言ってくれない。初めの方は、何も言わないので疑問に思ったり、不満に思ったりしていたが、今になってみると、それもわざとなのだということに気付いた。
習うより慣れろ。
自分でやった行為が、結果、失敗だったとしても、成功だったとしても、人に言われてやるより、断然、身につく。
「見ててるから、倒してみろ。」
唐突に親父が言い出した。親父は少し離れた所の切り株に座り、笑いながらやってみろと手で合図した。
少しの緊張感。先程と同じ手順で木を倒した。上手くいった。親父が後ろから近付いてきた。
「70点だな。」
「はい。」
素直に答える。
「何が足りないか分かるか。」
「いや。分からない。」
「淳、何処を狙って倒した?」
「あの木とあの木の間。」
「じゃあ、その時点で間違いだ。」
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