プロローグ

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 全く意味が分からない。 「これは重要なことだから、覚えて置けよ。」 「はい。」  良かった。教えて貰える。 「何のために木を倒すんだ?」 「材を出すため。」 「そう。じゃあ、今みたいに木と木の間をすり抜けるように倒したら、スピードがついたまま地面に当たり、傷ついたり、折れてしまったりしてしまうだろ。」 「それならどうすれば。」 「それはな、受け口を作るときに、右でも左でもどっちでもいいから少し角度をつけてやればいい。あくまでも少し。最後は追い口で調整。それ分かるな?」 「うん。」  追い口を入れるとき、平行ではなく、倒したい側を少し切らないで残しておく。そうすると残した側の方向に倒れるように微調整出来る。 「で、どちらかの木に寄りかかるように倒して、寄りかかりそうになったら、追い口を平行に戻す。そうすると一旦木に当たるから、スピードが軽減される。そして、転がるように木と木の間に倒れていく。分かったか?」 「分かった。ありがとうございます。」 「くれぐれも角度をつけすぎたり、追い口を余計に曲げたりするなよ。少しだからな。」  そう。親父が言っていることはもっともだ。自分の手元の切り口が1センチズレただけでも、木は何十メートルもあるので、先端では何メートルもズレることになる。なのでミリ単位の調整が必要なのだ。  まさに感覚。まだ俺はマスター出来ていない。 「まあ、ゆっくりでいいから、覚えとけ。」 そう言って、親父は自分の仕事へと戻っていった。
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