31人が本棚に入れています
本棚に追加
「あげるって、こ、これ……」
「誕生日なんだろ?」
目の前に広がっている風景に驚いていると、あいつはポケットから小さなケースを取り出した。
キラキラ光っていたのはリングだけではない。
「高級魚にふさわしい水際の式場、気に入った?」
こぼさないように必死で堪えたもうひとつのキラキラは、皮のシートに大きな水たまりを作る。
「どういう事か、理解が…」
「……いやだ?」
ぶんぶんと首を振った勢いで、水たまりはさらに水面を広げてゆく。
「いやじゃ、ないです」
「ほんとおもしろい、お前」
安物の金魚は、生を受けた記念日に、はれて鯉の仲間入りをした。
最初のコメントを投稿しよう!