素赤

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「何が、決まったの?」 まさしく、恐る恐るだ。 薄っぺらいが長めの付き合いの中で、あいつの事を他人から聞かされるのはいい気分ではない。 「太田課長の娘とお見合いしてたって話よ」 こんな事実を聞かされるなら金槌で殴られる方がマシだと、顔に書いていたかもしれない。 「課長の娘、まだ若いでしょ?」 言いながら、やはりと心が呟いた。 「あの人、口では落ち着いた女がいいなんて言ってたのにねぇ?」 ちゃかす友人の声がまともに聞こえないのは、耳掃除をさぼっているからではなかったはずだ。 心が、塞がって聞こえない。
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