31人が本棚に入れています
本棚に追加
その後どう仕事をこなしたのか、友人とのランチタイムをどこで過ごしたのか、びっくりするほどの記憶喪失だ。
「ゆき……?」
手が空くたび何度も首を傾げる友人に、うっかり話してしまいそうになるほど気弱な1日を過ごし、
「次はいつ会える?」
珍しく甘えたような声で電話をよこしたあいつが、無性に恋しく思えた。
「しばらく、無理かも」
何せ金魚すくいが得意と言われる私の事だ。裏腹や天邪鬼の使いこなしなら、嫌になるほど無意識であって完璧だ。
「時間、作ってよ」
そんな時に限って、あいつはいつもと違う反応をする。
「ちょっと、なら……」
だから、うまくすくえない。
最初のコメントを投稿しよう!