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自慢ではないが、自分の特徴のうち自信を持って人に言えるのは、極度の方向音痴であるという事だ。
その日も迷う事なく迷っていた。
時間の制限がある中、バッグを探っても携帯電話は見当たらず途方に暮れていると、
「白石…さん……?」
オフィス街からわずかに外れたと記憶するその場所だが、この後の展開を想えば、乙女ならそこがどこだったかなんて覚えていられないはずだ。
「倉内です。先日は太田課長にお世話になりました」
たった電車を二駅ほど通過すれば、私にとっては異国だと、間抜けな顔をしていたのだろう。
彼はしばし私の頭を撫でておいて、笑ってはいるが真面目な声でこう言った。
「やばい、可愛くて一目惚れしちゃった」
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