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「半日くらいです。何です?」
会話をしながら、ヒカルがパタパタと手を動かすので、武智は首を傾げた。途端に、ヒカルがムッとしたような顔をする。そんな顔をされても、何が言いたいのか分からない。
「―――起きたい。手伝って。」
ヒカルがむすっとして言う。いや、分かれという方が可笑しいと思うのだが。
そう思ったが、余計な事は言わずに、武智は手を貸した。
「そういえば、喜原社長に連絡は?何か言ってた?」
「今日は無理らしいですが、明日は来るそうです。」
「いや、来なくていいって言っておいて。」
あっけらかんと言われて、武智は戸惑う。会いたいものではないのか。
「―――いいんですか?」
「あの人、大忙しでしょ。弟が捕まったんだから。」
「そうでしょうけど。」
「代わりに、村上さんがついててくれたし。」
ふふ―――と、ヒカルが愉しげに笑う。ヒカルにとっては他愛ない言葉遊びでも、武智の胸はバカ正直に締め付けられる。
叶わぬ想いだと突き付けられたようで、堪らない気分だ。
「ヒカルさん、なぜ―――、」
武智の絞るような声に、ヒカルはキョトンと顔を上げた。
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