Chapter 19

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3、 〈H Side〉 これで最後か―――と、椿山ヒカルは心の中で感慨深く思った。もしかすると偶然出会う事もあるかもしれないが、その時は違う人物としてだろう。 「なぜ、庇ったんですか?」 やけに苦しそうな顔をして、村上武智が問う。 いや、何だ、その顔は―――と、ヒカルは内心で首を傾げた。庇われた事が不服なのか。ヒカルに怪我を負わせた罪悪感か。 大体、改めて理由を聞かれても、衝動的な行動を説明はしずらい。 「何でって。知り合いが撃たれそうになってたら、普通は庇うでしょ?」 「庇いません。」 「え?」 「普通、庇いません。」 村上がキッパリと言い放つ。 自信満々だが、村上が逆の状況であったら、庇わないとは思えない。 ―――何を意固地になって。 ヒカルが呆れて思うと、違う―――と、村上が首を横に振る。 「もちろん助けますよ。でも、庇うのではなくて、突き飛ばす方が自然でしょう。」 「そんな事、言われても。咄嗟に、」 ヒカルは答えながら、呆然となった。 確かに村上の言う通りじゃないか。 守る対象が子供や老人ではないのだから、突き飛ばす方が簡単だったろう。庇う方が格段に負傷する確率が高いのだ。 それを今、村上に指摘されるまで、疑問にも思ってなかった。 ―――だって、 庇う事しか思い付かなかった。 喜原遼基の部下が持つ銃が、村上を狙っていると分かった瞬間の焦燥が蘇る。 守らねば―――と、思った。 無我夢中で、冷静な判断などできなかった。 馬鹿な。 馬鹿だ。 ―――まさか、このオレが。
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