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「それで、ヒカルの何が聞きたいのだ?本当に行方は知らないぞ。」
「あの、社長は―――、捜されていないのですか?」
改めて考えると、おかしな状況だった。
ヒカルは勝基の愛人であり、武智は間男という立場になる。
いわゆる、恋敵のような間柄だ。
武智とヒカルの事を、勝基が気づいていないとも思えないのだが、どうなのだろう。万が一気づいていないとすれば、やぶ蛇になりかねない。
―――余計な事は言わないようにせねば。
武智が恐る恐る問うと、勝基は特に気分を害した様子も見せずに、気取った仕草で肩を竦めた。
「まあ、元からその予定だったからな。恐らく、探られる事を快くは思わないだろう。」
「どういう事で―――」
「ヒカルは―――、愛人などではないのだよ。」
はっ?―――と、武智の口から音にならない声が出た。
―――愛人、ではない?待て待て待て待て、
新事実を全く飲み込めずにいる武智に構わず、勝基が話を進める。
「この街に麻薬が入ってくるのを防ぐ事と、ついでに山口組を潰す事。この2つの為に、手を組んだパートナーだ。片がつけば、解散になるのは始めから分かっていた。」
勝基の言葉を処理しきれない。
意味が分からない。いや、聞こえてはいるのだが、理解ができない。
愛人ではない、愛人ではない―――と、その言葉だけが頭の中にこだましている。
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