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赤石が呆れたように言うと、エレベーターの扉が開き、二人して乗り込んだ。他に乗客はいない。
「5階でいいですか?」
「ええ。」
公安課のある5階のボタンを押すと、克成は1つずつ上がっていく数字を目で追った。すぐに5まで行くとエレベーターのドアが開き、赤石に続いて降りる。
速い―――と、違和感があった。
『キハラホーム』の時がいつも8階だったからだ。やはり感覚が抜けきっていないのだろう。
赤石がくるりと振り返り、ぼんやりしていた克成は焦って足を止めた。
「東城、あんたね。今日からまた仕事なんだから、ナメクジみたいになってないで、シャキッとなさい。」
「ナメクジって。」
酷い言われようだ。
確かに、割り切れていないのは事実なのだが、普通なら触れにくい事をグサグサと遠慮なく刺してくる。
克成が言い返せずに頬をひきつらせると、赤石が上機嫌に笑う。人がグジグジしているのが余程嬉しいらしい。
鬼畜な上司だ。
「きっと呪いね。東城に捨てられた女の子たちの呪い。今まで、適当に遊んできたツケが回ってきたんじゃないの?」
「遊んでませんて。」
「嘘ばかり。ほら、行くわよ。やる事、山ほどあるんだからね。」
バシッ―――と、赤石に背中を叩かれ、克成は曲がっていた背筋を強制的に伸ばされた。
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