Chapter 21

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「いや、何もしてない―――、と思います。」 いまいち自信がなく、消えそうな声量になった。 「総監が直々に電話して呼び出してるのよ。何もしてない訳がないでしょう。」 「そんな事、言われても。」 復帰してから書類整理しかしていないのだから、心当たりはない。克成の書類にひどいミスがあったとしても、呼び出されるのは班長の赤石だ。 だから、用件には見当もつかない。 「とにかく、そのアホ面どうにかしてから、行きなさい。」 ―――アホ面って。 ひどい言葉遣いだ。 克成がこの部署に配属された最初から乱雑ではあったが、どんどん酷くなっていっている気がする。 赤石に春は遠いな―――と、失礼な事を考える。もしも口に出せば、結婚なんてお断りだと返されるだろう。 克成の心の声が聞こえたようなタイミングで、ギリッと赤石が目を尖らせる。 できるだけ平素の顔を保ちながら克成が首を傾げると、赤石にニヤリとサディスティックな笑みを返された。 何をされるのかと、身構える。 「もしかすると特別任務とかで、また潜入させられるかもね。」 赤石の不吉な予言に、克成は背筋を震わせた。
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