Chapter 21

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3、 これまで恋愛にしても、人間関係にしても、まあまあ上手く割り切って生きてきたので、克成は自分を切り替えの早い性格だと思っていた。大抵の事は飲み込めるし、何かひとつを思い悩み続けた経験はない。 しかし、今―――。 ヒカルの存在が海底に根を生やした珊瑚のように、克成の胸の奥に鮮やかに居座っている。 意外と女々しい性格だったらしい。 このような状態でまともに潜入捜査ができるとも思えず、まだ時間が欲しいのが本音だ。克成に拒否権があるならばの話だが。 コンコン―――と、総監室のドアをノックをした。 ここに来たのは、公安に配属になった時以来だから、1年半以上前の事になる。 その際には赤石もいたから、1人で対面するのは今回が始めてだ。 ―――どんな方なのだろうか。 庁内職員の間で、総監である藤森の評判は概ね高い。 46歳の若さでその地位にいるエリートの中のエリート。政治家などとの癒着や警察内部の不正を嫌い、正義感溢れる人物。厳しい面ももちろんあるが、声を上げるような事はなく、落ち着いた対応をする人である。 そう、噂されている。 どうぞ―――という、落ち着いた声が向こうから聞こえ、克成はドアノブを回した。 「失礼しま―――、」 声をかけながら室内に入った所で、克成は目を見開いた。片足を前に出した不自然な格好のままで固まる。
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