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再会して始めて、東城と目が合う。視線が絡まり、その変わらぬ熱に皮膚が粟立った。
「病院で、診てもらってますか?」
心配でならない―――そんな顔を見せられ、奏生の胸が軋む。
―――だから、嫌だったんだよ。
「雨宮さん?」
返事をしない奏生に、東城が足を一歩前に出す。近くなった距離に息が詰まる。
東城に動揺を悟られまいと、奏生は努めて平淡な声を出した。
「―――知り合いの病院で診てもらってる。」
「そうですか。良かったです。」
安心したように東城が目元を緩めると、ちょうどエレベーターが止まった。
―――5階だ。
公安課はここだ。
東城に背を向けて、奏生は開くのボタンを押した。動こうとしない東城を見ると、降りるのを迷うようにエレベーターの外と奏生を交互に見る。
「雨宮さんは、」
「オレは1階。」
降りるように奏生が目で促すと、東城が一瞬だけ傷付いたような顔をする。
「話がしたいです。」
東城がそう言って、奏生の手を握る。
触れた肌の熱さに目眩がした。
どうしようもなく懐かしいと感じてしまう。
―――忘れられる筈だったのに。
「東城。明日、連絡する。」
気を抜けば揺れそうになる声で奏生は言うと、東城の一回り大きな手を解いた。
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