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3、
白ワインが喉を流れ、腹の中が熱を上げる。
夜の10時を少し過ぎ、克成はカールトンホテルの1201号室にいた。目の前に雨宮が座っている事が夢のようだ。
たった一杯の酒量でフワフワと漂うような感覚になりつつ、克成は首を傾げた。
「内部調査?」
雨宮が一気に煽ったグラスをテーブルに置く。カツンと高い音が鳴った。
「発覚したのは、一昨日の朝。場所は、千葉警察本部の保管庫。暴力団から押収した薬物が、ごっそり無くなっていたらしい。」
「それは、大変な―――」
「詳しい事は何も分かってないから、一から調べなくちゃならない。この事を知ってるのは総監と、千葉の数人。これが、刑事部の名簿。」
数枚の紙の束を差し出され、克成は受け取った。
暴力団を相手にしているのは、組織犯罪対策係という部署だ。しかし、そこだけでなく刑事部全体が操作対象に入るらしい。
―――これを二人で。
大変な仕事だ。
ズラズラと個人情報が記載されている資料を眺めながら、気が遠くなった。
「出来るだけ、内々に処理するように―――との事。まだ巷に出回っていないといいけど。」
想像していたより、深刻な事態だ。
薬物が一般市民に出回る前に手を打たねばならず、前回のように時間をかけた捜査は難しい。
―――スピード勝負か。
ドボドボとワインをグラスに注ぎながら、雨宮が話を続ける。
「明日、警視庁から移動して、明後日から千葉本部に入る。期間は3週間以内、もちろん本名のまま。」
「雨宮さんも同じ部署ですか?」
「いや、警視長に空きがないみたいだから、別の―――」
「警視長?」
克成が首を傾げると、雨宮が不思議そうに瞬く。
「うん?警視長。オレの階級、言ってなかったか。」
「その歳で、警視長ですか!?」
すっとんきょうな声を上げた克成に対して、雨宮が煩そうに眉を寄せる。
「何歳と思ってるんだよ?29だし。」
「え、歳上ですか!?いやいや、それにしても―――」
29歳で警視長の地位に就く人間がいるなど、今まで聞いたことがない。何をすれば、その様な速さで出世できるのだ。
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