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克成に大した興味はない―――と云うような素振りに見える。しかし、本当にそうだろうか。逆に、怒らせてしまったようにも感じる。
間違った事を言ったとは思えないが、じわっとイヤな汗が出てきた。
「誰にしようかな~。」
雨宮がサイドテーブルに腰掛け、スマホを弄り始める。ギョッとして、克成は椅子から立ち上がった。
「雨宮さん!」
慌てて声を上げる克成に対して、雨宮がのんびりとスマホから視線を離す。
「なに?」
「何って、―――まさか、オレの代わりに誰か呼ぶつもりじゃ、」
「そうだけど?」
心底不思議そうに雨宮が首を傾げる。そこに、後ろめたさのような感情は、まるで窺えない。愕然として、克成の体がふらついた。
「だって、東城はしないんだろ?オレ、ずっと怪我でできなくて、かなり溜まってるんだよ。東城がヤル気にならないなら、誰か別の相手を―――。」
「待ってください!」
悪気もなく当たり前のように話す雨宮の言葉を、克成は悲鳴のような声で遮った。
それはないだろ―――と、思う。
しかし、何と言えば分かってもらえるのか。異文化に触れた時のような感覚だ。
克成が頭を抱えていると、雨宮が呆れたようにため息を吐く。
「あのな。おまえがオレを好きなのは分かった。けじめをつけたいって事だろう?なら、そうすればいい。―――だが、それにオレが付き合う義理はないな。おまえの為に、何で我慢なんかしなきゃいけないんだ。」
雨宮はスマホを片手で触りながら、高飛車に言い放った。
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