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2、
〈A side〉
奏生は面白くなかった。
確かに、最初は思わぬ再会を歓迎してはいなかった。しかし、顔を合わせて話をすれば、東城に惹かれているのを認めない訳にはいかず、奏生はあっさりと腹をくくったのだ。
東城に堕ちる覚悟をした。
なのに、これだ。
何故、急に純愛思考になったのか。
一言、奏生の気持ちを伝えればいいだけだろうが、それではつまらない。それに、素直な自分など気持ちが悪る過ぎて無理だ。
なにより、東城の大人ぶった態度が真底気にくわない。
―――その程度かよ。
端的にいえば、もっとがむしゃらに求めて欲しかったのだ。
奏生の考えている事など想像もしていないのか、目の前の東城はショックを受けて固まっている。
「ほら、どうするんだ?オレが他の奴に抱かれてもいいのか?」
「それは、いやです。」
ショックから復活はしていないようだか、東城が焦ったように答える。そんな姿を見て、少し気分が上昇した。
我ながら、性格が悪い。
―――分かってる。
随分と自分勝手だとは自覚しているが、奏生に改める気は更々ない。そういう性格なのだ。そんな性格の人間を好きになった、東城が悪い。
「雨宮さん、でも、」
「ごちゃごちゃ言うな。臆してる暇があったら、口説いてこいよ。そんなナヨナヨした奴にオレが惚れるとでも?」
奏生が偉そうに言い放つと、東城が諦めたように肩を落とした。まだ迷っているような困り顔で、仁王立ちする奏生の元へ東城が近寄って来る。
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