恋する君は写真の中に 後半

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僕が恋した少女は写真の中にいる。何もわからないのがもどかしい。そもそもとして、昔の写真なのだからこの彼女には出会えないのだが、僕の気持ちは止まらないのだ。 悶々としながら、数日が過ぎた。 家族はまだ誰も帰宅していないので、僕は自宅のリビングで彼女の写真を眺めていた。 1日30分は眺めていないと最近では気が済まなくなっていたのだ。 「その写真は--」 突然、背後から声を掛けられる。しまった、集中し過ぎた。父親が帰宅してしまった。恥ずかしいことこの上ないぞ。 「あ、あー、これはさっき家に落ちてたんだ、誰のかな? 知ってる?」 苦しい言い訳だ。 「どこにあったの!? ずっと探してたんだ!」 へ? どういうことであろうか。 「この前部屋の掃除してから見当たらなくなってたんだよな」 ではあれか、僕の父親が掃除中、何かの拍子でこの写真が本に挟まり、それに気付かず父親が古書店に売ってしまったということか。 「よ、よかったねー見つかって」 動揺を隠しきれているだろうか。しかし父も写真が見つかった喜びで浮かれているので大丈夫なようであった。 「うん、これは俺がお前の母さんに片思い中に隠し撮りした写真なんだ。当時はこれが宝物でさー」 ガツンと衝撃が頭に走った。 僕が恋した写真の少女は、僕の実の母親だったということか。 僕はその日以来、母の顔をちゃんと見れなくなった。 反抗期の始まりである。
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