一両目 忘れ物

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(だからって、なぜ睨む?)  曳野が不快感を出したので、亜里は申し訳なさそうに釈明した。 「すみません。彼氏じゃないんです。ただのクラスメイトです。私が頼んだわけじゃなくて、探偵事務所は危険だとかなんとか、心配だからと無理やりついてきたんです」  それを聞いて、曳野もウサミミも驚いた。 「彼氏ではない!?」  恋人に近づいてくる男を、全員遠ざけようと攻撃する困った奴かと思ったら、恋人でもないとは! 「じゃ、関係ないよね。部外者には、お引き取り願おう」  曳野はすぐにここから出て行くように指図したが、統は動かないで抵抗してきた。 「第三者が立ち会って、何か困ることでもあるのか!」  彼氏でもないくせに、熱くなってごねる。 (こいつ! 面倒くさい!)  さらに、探偵業をバカにしてきた。 「探偵なんて、人の秘密をコソコソと嗅ぎまわってチクる、底辺の仕事だろ?」 「はあ?」  そこまで言われた曳野は、さすがに黙っていられなかった。
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