一両目 忘れ物

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「なんだよ」  曳野は、統の鼻先に人差し指を向けた。 「いい加減にしろ! 次に何かしゃべったら、ここから叩き出す!」 「ぐ……」 「僕は浅野亜里さんを助けようと思っている。その気持ちは絶対に君と同じだ」 「……」  亜里が統を怒った。 「統、いい加減にして! 私はここへ相談に来たの! さっきから邪魔しかしてないじゃない! 邪魔しかしないなら、帰ってくれない?」 「分かったよ……」 「それから、曳野さんを睨まないこと。さっきから失礼な態度ばかりで、私が恥ずかしい」 「ごめん……」  亜里がとうとう本気で怒り出したと分かった統は、ようやく大人しくなった。 「続けようか」 「私は、二子玉川駅から乗っています」 「乗り換えなしだね」 「はい」 「自宅近くでは、現れる?」 「今のところ、高校近くでしか見ないですね」 「わかった。まずは、高校前で見張ろう」  亜里の一日のスケジュールを聞いて、曳野は行動計画を立てた。
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