一両目 忘れ物

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 しばらく待つと、私服の大学生らしき若い男が、ウロウロと不審な行動を取っていることに気づいた。 「あの人、怪しくないですか?」 「そうだな」  曳野とウサミミは、気づかれないように足音を忍ばせて後ろから近づき、声を掛けた。 「ちょっと……」 「ピヤッ!」  曳野の声にビックリした男はピョーンと高く飛びあがったので、こちらまでビックリした。 「ピヤッ? 話を聞きたいんだけど、ここで何を?」 「ワー!」  怯えて叫ぶその様は、罪を認めた犯人にしか見えなかった。 「やっぱりか!」  そのまま走って逃げだしたので、曳野とウサミミは追いかけた。 「ウワー!」  叫びながら逃げる男。 「待てー!」  追いかける曳野とウサミミ。  男は、ヒョロヒョロな体のヘロヘロな走りのため、すぐ曳野に追いついかれた。  ウサミミでさえ、追いつくのは簡単だった。 「わー! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!」  こちらが言う前に、必死に謝っている。
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