一両目 忘れ物

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「目的は?」 「可愛いって話だから、見たいなあと思って」 「どこでその子の話を聞いた?」 「ネットの掲示板。これです」  大学生は、自分のスマホを見せた。  そこには、亜里の名前と、『声を掛けてください』というメッセージが書かれている。 「ね! これを見れば、俺は悪くないって分かるでしょ? 本人が、自ら声を掛けてくれと誘っているんだから!」  本人の意志だと信じているから、大事にならないと考えた上で簡単に認めたようだ。  俺は悪くないという男の主張に、曳野は頭に来た。 「そんなわけ、あるか! 誰かが、嫌がらせで載せているんだよ!」 「まさかあ! だって、本人でなければ生徒手帳の写真なんてネットに載せられないよ」 「生徒手帳の写真だって? それがネットに載っていたのか?」 「そうだよ。それを見てここに来たんだ」 「それを見せてみろ」  男は、身の潔白を晴らすために、それもスマホで見せた。  亜里の顔写真、住所、学校名などが載っている生徒手帳の1ページ。  ただし、肝心な部分は黒塗りで隠れている。
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