一両目 忘れ物

24/48
前へ
/50ページ
次へ
「肝心な部分を隠して好奇心をあおり、お金を払わせる仕組みか」  巧みな心理作戦に、曳野は感心した。 「人の情報を売り買いするなんて、ひどい話ですね」  ウサミミは、腹が立った。 「この子の情報は、どこまで手に入れた?」 「顔写真、名前、高校名」 「自宅住所は?」 「自宅住所は非売品だとかで、売ってもらえませんでした」  だから、自宅近くでは現れず、高校前だけだったということだ。 「総額で、君はいくら払ったんだ?」 「10万円」 「た、かーい!」  ビックリしたウサミミは、思わず声をあげた。 (そんなことにお金を払う男って!)  ウサミミには、さっぱり理解できない。 「高い金を払ったからには、今度は直接見たくなるってことか。これで、不特定多数が同じ時期に集まってきた理由が分かった。これを買った男たちが、一斉に寄ってきたってわけだ」 「もう、いいですか?」 「二度と、この子に近づくなよ」  亜里の情報を消させて、二度と近づかない約束をさせると、男を解放した。 「10万円も払ったのに……」と、ブツブツ文句を言いながら、男はどこかへ消えた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加