一両目 忘れ物

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 三人と別れると、ウサミミは曳野に聞いた。 「校門前にいた男について、言わないんですか?」 「まだ、はっきりしたことが分からないからね。逐一報告しても、余計な不安を与えるだけだから」 「そうですけど……。この後は? 事務所に戻りますか?」 「このまま、猪瀬統を尾行する」 「え? 彼を?」  曳野の得意なITテクニックで、ネットの黒幕を暴くつもりだろうとウサミミは考えていたが、曳野にそのつもりはなかったようだ。  前を歩く、三人。  ミチルが別れ、亜里と統は一緒に北千束駅から大井町線に乗った。  曳野とウサミミは、気づかれないように数両離れて乗った。 「先ほど自由が丘駅を使っていると言っていたので、それが本当か確認する」 「嘘を吐いているかもしれないってことですか? では、彼が怪しいと言うんですか?」 「亜里さんの近くにいて、生徒手帳を手に入れることのできる人間が怪しい。猪瀬統もその一人だ」 「たまたま、生徒手帳を拾った誰か、じゃないですか?」 「生徒手帳が見つかった駅は南北線飯田橋駅。これがどういう意味か、前に説明したから分かるだろ?」
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