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ミチルは、フウフウしながらウサミミに聞いた。
「で、どこまで行ったの?」
「さあー? どこまで行ったんだろ?」
「は? そうじゃなくて! 二人はどこまで行ったのかって、聞いているのよー!」
ウサミミはドキリとしたが、言うほどの出来事はない。
「何にもないよ」
「ほんとにー?」
簡単には信じないミチル。
「本当だって。悲しいほど、何もなし」
「そうかー」
ウサミミの寂しそうな表情で、ミチルは嘘はないのだろうと察した。
「ところで……」
ミチルは、自分の最大の関心事である千路についてウサミミに聞いた。
「千路さんは、ここには来ないの?」
千路は曳野の弟で、ミチルが一目ぼれしたのだが、遠まわしに振られていた。しかし、本人はそのことに気付いていないのだった。
「あー、やっぱりそれかー」
ミチルが事務所へ遊びに来たいと言った時、理由を言われなくても想像するのは簡単だった。
ここに来れば千路に会えるかもしれない、と期待していたのだろうが、あちらだってそんなにここへくる理由はない。
「滅多に来ないから、期待しないほうがいいよ」
「そうなの? ガッカリ」
自分に会いたいからじゃなかったことが、ウサミミにはガッカリだ、
「ミチル、あのね……」
「なに? フウ…、フウ…」
ミチルはコーヒーを口で冷ますと、恐る恐る口をつけた。
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