一両目 忘れ物

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「好きじゃないから、ここまでできるんだよ」  ウサミミは、曳野の言葉が胸に刺さった。 「そうですよね! 人を利用するなんて、好きだったらできないですよね!」  亜里の気持ちを考えると、こちらまで悲しくなる。 「これで、最初からむき出しだった敵意の理由も分かったな。亜里さんを助けようとする僕らは邪魔者だ」 「本当ですね」 「さっき校門前の男について話さなかったのも、犯人かもしれないあいつの前だったからだ」  そういうことだったのかと、ウサミミは改めて曳野の先を見通す力に感心した。 「さて、これからどうするかだが。まともに聞いたところでやったことは認めないだろう。しかし、野放しにしてエスカレートするのも怖い。亜里さんに会って、今後の対策を相談しよう」  亜里と会うことにした二人は、大井町線に戻った。  ホームに二子玉川駅行きがいたが、ちょうど、ドアが閉まるところだった。  間に合わず、見送った。 「ん?」  曳野が、電車の何かに反応した。
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