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「好きじゃないから、ここまでできるんだよ」
ウサミミは、曳野の言葉が胸に刺さった。
「そうですよね! 人を利用するなんて、好きだったらできないですよね!」
亜里の気持ちを考えると、こちらまで悲しくなる。
「これで、最初からむき出しだった敵意の理由も分かったな。亜里さんを助けようとする僕らは邪魔者だ」
「本当ですね」
「さっき校門前の男について話さなかったのも、犯人かもしれないあいつの前だったからだ」
そういうことだったのかと、ウサミミは改めて曳野の先を見通す力に感心した。
「さて、これからどうするかだが。まともに聞いたところでやったことは認めないだろう。しかし、野放しにしてエスカレートするのも怖い。亜里さんに会って、今後の対策を相談しよう」
亜里と会うことにした二人は、大井町線に戻った。
ホームに二子玉川駅行きがいたが、ちょうど、ドアが閉まるところだった。
間に合わず、見送った。
「ん?」
曳野が、電車の何かに反応した。
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