一両目 忘れ物

37/48
前へ
/50ページ
次へ
「え? 顔が見えたんですか?」 「ちらっと横顔が。あいつ、一旦、駅から出た振りして、戻ってきたんだ。僕らを撒いたつもりだったのか?」 「私たちが落とし物の問い合わせをしていたことで、かち合ったんですね。どこへ行くんでしょう?」 「溝の口行きだったから、もしかしたら、亜里さんのところかも!」  二子玉川駅は、溝の口駅の一つ前にある。 「さっきの質問でこちらの意図を察して、何か行動を起こすのかもしれない」 「亜里さんが心配!」  気持ちは急ぐが、電車が来なければ向かうことができない。  待つ間、曳野は二子玉川駅の構内図を調べた。 「二子玉川駅では、2階の2番線ホームに到着する。できるだけ時間短縮になるよう、改札に一番近い先頭車両に乗ろう」 「あ、きましたよ! 溝の口行き!」  二人は、やってきた次発電車の先頭車両に乗った。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加