一両目 忘れ物

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 13分後、電車は二子玉川駅に到着した。  二人は、急ぎ足で降りると構内から出た。  空一面に、今にも降りだしそうな黒い雲が広がっている。  駅周辺には沢山の人々がいて、とてもにぎわっている。ビジネスマンの姿より、華やかな買い物客が多い。 「わあー、都会!」  初めてきたウサミミは、ここが洗練された街であることに驚いた。  大井町線のほかに田園都市線も停車する二子玉川駅周辺は、ショッピングセンターやデパートがひしめき合う商業地帯。  しかしその特徴は、駅から少し離れただけで驚きの静かさに包まれる豊かな自然があることだろう。そのため、高級住宅地でもある。 「なんだか、すごいところですね」  ウサミミは、高級ブランド店の紙袋をぶら下げて優雅に歩く大勢の女性たちに目を奪われた。  曳野も驚いている。 「久しぶりに来たけど、ずいぶんと開けたもんだなあ」  大手百貨店のある西側は昔から変わらないが、以前は小さな店しかなかった東側までが計画的に再開発され、今ではいくつもの高層タワーがそびえたっている。
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