一両目 忘れ物

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 ウサミミは、亜里の身を案じた。 「亜里さんは、大丈夫でしょうか? ここに向かったということは、統が何か企んでいるってことですよね?」 「僕らがまだ知らない何らかの恨みなどを、もしも、亜里さんに対して持っていたのなら、とても危険だ。変な手出しをしていなければいいのだが」  真実に近づく曳野たちの行動に統が焦り、最悪の結果を引き起こすことを曳野は恐れた。 「まずは、亜里さんに電話してみよう」  無事を確認することを兼ねて、曳野は亜里に電話を掛けた。 『ハイ、亜里です』  特に緊迫感もなさそうな声で出たので、ホッとした。 「そちらに猪瀬統が行っていませんか?」 『彼とは、自由が丘駅で別れたっきりです。その後のことは分かりません』 「来ていない?」  曳野は、変だと思った。今頃、統はとっくに亜里のところにいるに違いないと信じていた。 (確かに電車に乗っていたのに。では、どこへ行ったのだろう?)
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