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憂いなくコーヒーを飲んでいるミチル。
「ゴクリ……」
ウサミミは、ミチルが飲み終わるまで待つと、思い切って言った。
「千路さんは、やめておいた方がいいよ」
「なんで?」
ミチルは目を大きく開いて驚いている。
なぜ急にウサミミがそんなことを言うのかと、戸惑っている。
ウサミミは、『もう、振られているんだよ』と言おうかと悩んだが、その顔を見るとどうしても言えなかった。
「あの人、すごく、モテるみたいだから……」
だから、千路に問題がある理由付けにした。
「えー! 遊び人なの?」
「ううん。遊び人ではないと思う。むしろ、真面目なんじゃないかな」
ミチルは、ウサミミの深刻な顔を見て、言いたいことが分かった。
「そうかー。私じゃ、ダメってことだね……」
ミチルは、大きく肩を落としてうなだれた。
ウサミミは親友の悲しむ顏など見たくなかったが、今のうちに現実を知っていたほうがいいと思ったことは間違っていないと信じている。
でも、悲しませたことは謝るべきだろう。
「ごめんね……」
「ウサミミが謝ることないよ。教えてくれて、ありがとう」
ありがとうと言いながら、ミチルは静かに泣きだした。
ミチルの涙を見たウサミミまでもらい泣き。
「ウサミミまで、泣くことないのに……」
「勝手に、出てきちゃうんだよ」
感情が高まって流れる涙だから、コントロールは効かない。
二人で静かに泣いていると、曳野が帰ってきた。
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