一両目 忘れ物

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 曳野は、亜里の家までの最短ルートをスマホで調べた。 「東側の公園を抜けると、早いみたいだ」 「はやく、行きましょう!」  曳野とウサミミは、ジョギングや、犬の散歩をする人々、ベビーカーを押しながら進む若い母親グループを避けながら突き進んだ。 (みんな、楽しそう……)  誰もが、なんの悩みもなさそうな明るい表情をしている。  悩みのない人などいないと思うのだが、ここでは見当たらない。  それはきっと、公園という癒し環境のなせる技だろう。  公園を出ると、一戸建ての立ち並ぶ住宅街に入った。 「この辺りだな」  曳野とウサミミは、住宅街を歩きながら、一軒、一軒、浅野の表札を捜した。  捜しながら、曳野は統の行動を予想した。 (亜里さんは一人だと言っていたが、すでに一緒にいて、亜里さんに嘘をつかせていることも考えられる。もしくは、どこかに隠れているか……)  ウサミミは首を左右に激しく動かしながら、一生懸命に捜した。  住宅密集地のため住宅の裏手にも住宅が隠れていて、かなりの難航を強いられる。 「所長、家がたくさんあって、なかなか見つかりませんね」 「そうだな」  曳野は、別れて捜すことを提案した。 「一緒に捜しても効率が悪い。一旦、別れよう。僕は向こうを回って捜す」 「それがいいですね」 「気を付けていけよ。見つけ次第、すぐ電話で連絡しあおう。GPSはオンになっている? はぐれたらそれで捜すから」 「はい」  二人は、お互いの位置が分かるように、スマホのGPS機能をオンにすると、東西に別れた。
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