一両目 忘れ物

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「痛い……」  ウサミミは、手のひらと膝頭を擦りむいている。 (誰が突きとばしたの?)  必死に首を回して背後を見ると、統が庭石を持ち上げてウサミミに向かって投げ落とそうとしているところだった。 「何するの?」  ウサミミが問いかけても、統は黙ってにらんでいる。  今にも石を投げてきそう。 「やめて!」  ウサミミは両腕で頭を庇った。  曳野にはまだ連絡できていないから、助けに来ない。 「キャア!」  家から顔を出した亜里が、その光景を見て悲鳴を上げた。 「引っ込んでろ!」  統は亜里に怒鳴った。  そして、勢いをつけようと庭石を一層高く持ち上げた。 (落ちてくる!)
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