158人が本棚に入れています
本棚に追加
ウサミミが顔を伏せたところで、曳野の声が聞こえた。
「やめろ!」
統はその声に驚き、庭石を持ち上げたままで後ろを振り向いた。
そこには、曳野が立っている。しかも、スマホで統を撮影している。
ウサミミも、現れた曳野に驚いた。
「所長!」
「ウサミミ、怪我は大丈夫か?」
「擦り傷程度です」
統は、撮影を続ける曳野に怒鳴った。
「何を撮ってんだよ!」
「ようし、猪瀬統、覚悟しろ。全部撮影している。これでお前を警察に突き出してやるからな」
「余計なことを!」
興奮した統は庭石を曳野に向かって投げたが、持てる力以上に重かったようで、曳野まで届かず落ちた。
今度はスマホを奪おうと、曳野に向かって突進。曳野は、落ち着いてスマホを懐にしまうと、掴みかかってくる統の腕を素早くかわし、制服の襟を掴んで体を半回転。統の体を自分の背中で背負って宙に浮かせると、見事な一本背負いで力いっぱい地面に叩きつけた。
統は全身を打ちのめされ、ピクピクと痙攣すると動けなくなった。
鮮やかな流れで勝負がつき、ウサミミは立ち上がって喜んだ。
「やったあ! やっぱり、所長は強い!」
先ほどの痛みも、どこかへ飛んでいった。
最初のコメントを投稿しよう!